フォシーガ錠10mgに”慢性心不全”の適応追加|ポイントを解説

こんにちは、薬局長ゆうぴーです。

SGLT2阻害薬のフォシーガ錠10mg(一般名:ダパグリフロジン)に慢性心不全の適応が追加申請されました。

この適応追加によって、今後、心不全治療のガイドラインも影響を受けるようです。

この記事では、

  • 薬剤師が知っておくべきポイント
  • 適応追加のもとになったDAPA-HF試験
  • 処方Drに聞いた”慢性心不全に対するSGLT2阻害薬”処方の症例

について、解説します。

薬剤師が知っておくべきポイント

フォシーガ錠の適応に追加された”慢性心不全”について、サクッと解説します。

慢性心不全は、心臓のポンプ機能が徐々に低下する状態のこと。

慢性心不全

心臓のポンプ機能が低下
 ↓
心拍出量が低下
 ↓
右心不全:肺うっ血
⇒体静脈うっ血→浮腫・腹水

左心不全:体静脈うっ血
⇒肺うっ血→肺水腫・呼吸困難・動機

(右心不全の多くは、左心不全に続発する)

 

慢性心不全

フォシーガ錠の適応追加となる症例は、「左室駆出率が低下した心不全」。

左室駆出率
(LVEF:left ventricular ejection fractio)

左心の収縮力の指標を示す値で、

LVEF=心拍ごとに心臓が放出する血液量(駆出量)÷拡張期の左心室容量

(フォシーガ錠の適応追加の”LVEF低下”=LVEFが40%未満)

 

以上の慢性心不全のおさらいを踏まえて、フォシーガ錠に慢性心不全の適応が追加された概略について説明します。

フォシーガ錠への慢性心不全の適応追加の概略
  • 用法用量
    • 慢性心不全:フォシーガ錠10mgから処方開始
    • 糖尿病:フォシーガ錠5mgから処方開始→効果不十分→10mgに増量
  • フォシーガ錠5mgではなく、10mgのみに慢性心不全の適応が追加
    そのため、慢性心不全のために処方された場合は、「フォシーガ錠10mg→5mg×2錠」に変更ができません。
  • 初回から高用量(10mg)で処方されるため、多尿・脱水などの副作用に注意が必要です。
  • 糖尿病でなくても処方可能です。

 

適応追加のもとになった「DAPA-HF試験」

SGLT2阻害薬による心疾患・腎疾患の臨床試験が次々と発表されています。

ここでは、フォシーガ錠に慢性心不全の適応追加のもとになった「DAPA-HF試験」について紹介します。

DAPA-HF試験

概略だけをざっくりと話すと。

<方法>
心不全の標準治療に、フォシーガ錠10mgを追加投与した。

<結果>
糖尿病の有無に関わらず、”心不全の悪化”と”心血管死”が抑制された。

もう少し詳しく解説します。

<DAPA-HF試験>

  • 対象患者
    糖尿病の有無に関わらず、
    左室駆出率が低下した慢性心不全患者
    (左室駆出率が低下⇒左心室の収縮力が低下)
  • 方法
    フォシーガ錠10mgを1日1回投与
    心不全の標準治療にフォシーガ錠を上乗せ投与した
  • 結果
    糖尿病の有無に関わらず、
    ”心血管死”と”心不全の悪化”が抑制された
  • 有効だった症例
    NYHA Ⅱ度(”安静時は症状なし”、”身体的活動時は症状あり”)の患者に有効性がみられた
    逆に、NYHA Ⅲ、Ⅳ度の重症患者では、有効性が低下した
    (NYHA Ⅲ度:日常生活を制限しても症状あり、NYHA Ⅳ度:高度な運動制限をしても症状あり)
  • 安全性の評価
    「体液減少、腎イベント、重症低血糖、骨折、糖尿病ケトアシドーシス、足切断」
    について、調査した結果、
    治療を中断するような有害イベントはごくわずか

SGLT2阻害薬が心不全に効果があると考えられている作用メカニズム

SGLT2阻害薬(フォシーガ錠10mg)が慢性心不全に効果があることはDAPA-HF試験で分かりましたが、作用メカニズムはまだはっきりとはわかっていないようです。

ただ、いくつかの仮説が考えられているようですので、紹介します。

  • 利尿作用による心臓の負荷を軽減
  • 心筋に直接作用する
    心筋のNa+/H+の交換を抑制⇒細胞質のNa+↓、Ca2+↓⇒ミトコンドリアのCa2+↑⇒心筋収縮改善
  • 交感神経系の活性抑制
  • 心筋効率の改善
    ケトン体増加⇒心筋でのATP産生の増加
  • 腎臓のエリスロポエチン分泌刺激⇒酸素運搬能を改善
  • 炎症の軽減
  • 酸化ストレスの軽減
  • 代謝改善作用
    HbA1c低下、血圧低下、体重低下、Vascular Stiffness(血管硬化)改善作用

 

循環器内科医に伺った”心不全患者”へのフォシーガ処方の可能性

「フォシーガ錠の心不全適応追加」を踏まえて、「どういう患者さんへの処方を考えているか?」を循環器内科のDrに伺ったので、紹介します。

Drの話しのポイントは、2つ。

  • SGLT2阻害薬が心不全に有効であることは海外の情報で知っていた。
    しかし、日本では適応外だったので心不全患者には処方できなかった。
    この度、慢性心不全が適応追加されたため、今後は積極的に処方できる。
  • うっ血性心不全に使用していたループ利尿薬は電解質異常のリスクがある。
    フォシーガの利尿作用は電解質異常がないため、使いやすい。

お話しの内容を詳しく解説します。

循環器内科Drの話し

SGLT2阻害薬が心不全に有効であるというデータは知っていたが、保険適応にはなっていなかった。

そのため、これまでは、心不全患者にSGLT2阻害薬を処方できなかった。

適応追加されれば、糖尿病と心不全を併発している患者にフォシーガ錠10mgだけの処方で、糖尿病と心不全を同時に治療することができる。

また、うっ血性心不全の治療でループ利尿薬(フロセミド、アゾセミド)を投与すると、電解質異常のリスクがある。

一方、フォシーガの利尿作用は、電解質異常のリスクが少ないのがメリット。

なお、サムスカ錠も”電解質異常のリスクがない”利尿薬だが、「処方を開始するときは、入院しないといけない」という使用制限がある。

フォシーガ錠は、入院しなくても処方開始できるのが良いね。

 

まとめ

慢性心不全の発症原因に、糖尿病などの生活習慣病があげられます。

そのため、糖尿病と慢性心不全を併発している患者は少なくないようです。

処方医は、今後、糖尿病と慢性心不全を併発している患者への処方を期待しているようですね。