
こんにちは、管理薬剤師ユタカです。
調剤未経験の薬剤師が、調剤薬局で働きはじめてから、先ず最初にする仕事が、「ピッキング」というのが多いのではないでしょうか。
ピッキングは「処方箋に書かれたとおりの薬をタナから取ってくる」とはいえ、”処方箋も薬も見慣れていない”人にとってみれば、とっても大きな壁だと思います。
この記事では、
ピッキングの初心者が、絶対におさえておくべきポイントをふまえて、3ステップで解説しました。
ここに書かれているとおりに、ピッキングをすすめていけば、順をおってピッキングをマスターできるように解説しています。
この記事を書いている私は、
薬局で働きはじめてすぐは、ピッキングがぜんぜんできない「ダメダメダメ初心者薬剤師」でした。
人並みにピッキングができるようになるまでに、2ヵ月もかかっていましたから。
でも、ピッキングマスターできるようになるまで、色んな対策を考えながらピッキングをしてきました。
この記事では、ピッキングマスターできるようになるまでに取ってきた対策をもとに解説しています。
大前提:店舗にある薬を覚えていく|これがピッキング上達の”いちばんの近道”
ピッキング調剤を速く正確にするためには、店舗にある薬品を覚えていくことが一番の近道。
とはいえ、処方箋も薬も見慣れていない人にとって、いきなり「店舗の薬を覚えましょう」と言われても、・・・。となると思います。
まずは、「ピッキングをした薬は、何の薬なのか」を調べてみましょう。
さらに、採用薬リストにも”知らない薬”があったら必ず調べる。
これを繰り返していくことで、採用薬の知識がだんだんと増えていきます。
覚え方のコツは、作用機序別、薬効別に分類しながら覚えていくこと。
店舗採用のCa拮抗薬は、〇〇〇錠、△△△錠、☆☆☆錠、◇◇◇錠がある。
〇〇〇錠、☆☆☆錠は、高血圧症に使われる。
△△△錠、◇◇◇錠は、狭心症に使われる。
という感じで分類分けをします。
最初は、なかなか覚えにくいかもしれませんが、覚えていくうちに、楽に覚えられるようになります。
さらに、店舗で採用している薬を覚えていれば、処方箋を見たときに、「あっ、あの薬だ!」と、”愛着”のような感覚がわくので、タナの場所の覚えも早くなります。
ステップ1:患者さんの背景情報と前回の薬歴チェック
”どういう患者さん?”、”調剤で注意することはない?”という患者背景をチェックしない人がたまにいますが、それは要注意です。
チェックしないと、例えば、
- 患者さんの足が悪いことを知らずに、患者さんをこちらまで歩かせようとする
- 漢字を読み間違いやすい名前で、間違った読み方で患者さんを呼んでしまう
- この薬だけは分包するべきなのに、分包せずに渡した。
という具合に、患者さんに失礼極まりない対応をしてしまいます。
チェックするポイントは、
- どういう患者さんなのか?
- いつも急いでる
- 怒らせると怒鳴るので怖い
- 名前を読み間違いやすいので注意
- 足が悪いので、話しに行くときは座席に行く
といった、患者さんの性格や特徴についての情報
- 一包化や粉砕をする患者さんか?
→いつもは一包化で渡している患者さんでも、処方箋の指示に一包化が抜けていることがあります。
”病院のミスなのか”、”本当に今回は一包化しなくてもいいのか”を病院に(必要なら患者さんに)確認します。 - 先発かジェネリックか?
→処方箋を見ただけでは、先発品希望かジェネリック品希望かが分からないです。 - ジェネリック品なら、どこのメーカーか?
→複数のメーカージェネリックが採用されていることがあります。
この患者さんは、どのメーカーのジェネリックかを確認します。
例:ランソプラゾールOD30mg「日医工」と「武田テバ」が採用 → この患者さんは、「武田テバ」。
患者さんの背景情報は、店舗によって薬歴に書かれている場所が決まっているので、分からなければ、必ず聞いておきましょう。
ステップ2:処方箋を全体的におおまかに見る
真っ先に処方箋全体を見ておくと、調剤のスピードが全然違います。
例えば、半錠に割る薬が処方されていれば、半錠の分包を一番最初にします。
そうすれば、分包中に他の錠剤をピッキングすることで、時間短縮になります。
さらに、ある程度、ピッキングになれてくれば、
処方箋に見慣れない薬がある → 在庫している薬かどうかを先に確認 → 在庫がない → 手配をする → 手配方法が分からなければ、真っ先に経験のあるスタッフに相談
こうすれば、他のスタッフが薬の手配をしているうちに、自分がピッキングをするので、時間短縮になります。
さらに、薬剤師としての力量がついてくれば、
- リウマチの薬を服用している患者さん→指が不自由で、薬が取り出しにくそう
→一包化提案 - ”粉砕指示”されている処方に、粉砕できない薬が処方された
→他の剤型の薬(OD錠など)に変更提案 - 高齢者で、薬の種類が多い
→一包化提案 - 一緒に服用・調剤ができない薬(併用禁忌や併用注意)
→別の薬はないか、用法を変更すれば解決しないかを検討
(どう対処すればいいかが分からなければ、すぐに他のスタッフに相談しましょう)
といったことにも気付くことができます。
ピッキングをはじめる前にチェックをしておくことで、「ピッキング終了後に処方変更 → 無駄なピッキングだった」にならずに済むのです。
ステップ3:処方箋を見て、ピッキングをする
1.処方箋を見て、薬品名・規格・剤型・(ジェネリックならメーカー名)のチェック
例)ランソプラゾールOD錠15mg「日医工」
ランソプラゾール→薬品名
OD錠→剤型
15mg→規格
「日医工」→メーカー名
どの薬にも付けられている名称のルールなので、必ずチェックします。
ピッキングミスをする人に”やりがち”な間違いは、
処方:ランソプラゾールOD30mg
→あっ、いつもの「ランソプラゾールね!」と薬品名だけを見て、いつも処方されている「ランソプラゾールOD15mg」を処方してしまう。
ということ。
最初の段階から、薬品名・規格・剤型・(ジェネリックならメーカー名)をチェックするクセをつけておきましょう。
このクセを付けておかないと、絶対にピッキングミスをしてしまいます。
(昔の私がそうでした。。。)
2.ピッキングするべき数のチェック
暗算より電卓を使う
処方箋から”ピッキングする数”を計算するには、暗算か電卓の2択です。
暗算より電卓の方が速いと思ったら、迷わず電卓を使います。
マイ電卓をポケットに入れておきましょう。
(100円ショップの電卓でもいいですし、調剤専用の「余り計算電卓」っていうのもあります)
ピッキングを続けていると、「どういう処方なら、どれだけのピッキング数になるのか」のパターンを覚えてくるようになります。
パターンを覚えてくれば、ピッキングが速くなっていきます。
でも、暗算でできそうなら、電卓よりも暗算の方が、断然速いです。
暗算を速くするコツは、処方パターンを暗記しておくこと
暗算を速くするコツは、処方パターンとピッキング数の組み合わせを覚えていくこと。
例えば、
- ロキソニン錠60mg 3錠分3 14日分 ⇒42錠
- レバミピド錠100mg 3錠分3 14日分 ⇒42錠
薬の種類によらず、「1日量×日数=ピッキング数」になっていることが分かると思います。
このパターンを覚えてしまいましょう。
3.処方箋の上から順に取っていく
ピッキングになれてくれば、”保管場所が近い薬をまとめて”取っていくと効率よく調剤することができます。
だけど、なれないうちは、処方箋の上から順番に取っていくのが、ピッキング漏れをしないためのコツです。
4.薬の場所を確認する
ピッキングのときに、「〇〇錠はどこにあるんだろう?」って、薬のタナを見渡して探している人がいますが、時間の無駄です。
薬の場所がすぐに分からなければ、「薬の場所の一覧表」を見ましょう。
「薬の場所の一覧表」は、たいていの薬局では準備されているはずです。
そして、一度ピッキングした薬の場所は、覚えるようにしましょう。
「だいたいここら辺にあった」というくらいでも、”覚えておく”だけでピッキングが速くなってきます。
そして、
たまには、店舗の薬のタナを全体的に見渡して、薬の場所を再確認してみるのがおススメです。
そうすれば、「この薬は、ここにあったんだ!」という発見があり、薬の場所を覚えていくことができますよ。
5.ピッキングした薬は、カゴの中に処方箋の上から順に並べる
たいていの薬局では、「ピッキングをした薬をカゴに入れる」ことになっていると思います。
カゴには、無造作にバラバラにいれるのではなくて、処方箋の上から順に並べて置きます。
上から順に並べた方が、
- ピッキング漏れに気付く。
- 監査者が監査をしやすい。
- 「丁寧に仕事ができる人」と周りから評価される
というメリットがあります。
『ピッキングをしといたから、あとはよろしく~』という人任せではなくて、次の監査者が監査をやりやすいようにするのがポイントです。
これができれば、ピッキングを攻略できる日は近いです。
ピッキング後に処方箋を見て、最終チェックをする
ピッキングミスをしやすい人の多くは、「ピッキング後に、もう一度処方箋を見て再チェックをしない」という人が多いです。
私も最初は、そうでしたが、再チェックをするようになってからは、ピッキングミスは、ほぼなくなりました。
ピッキング後に処方箋で再チェックをしない理由として、
- ピッキング後に再チェックなんかしていると時間がかかってしまう。
- 次のピッキングを早くしないといけない。
という理由があるかもしれませんね。
でも、ピッキング後に処方箋で再チェックをしないと、
- もう一度、ピッキングのやり直しをするので、余計に時間がかかる。
- ピッキングミスを指摘され続けていると、周りからの信頼をなくす。
- 周りからの信頼をなくすと、これから同じ店舗で仕事をしにくくなる。
ということになってしまうのです。
ピッキングは、正確性>速さです。
ピッキングが速くても、「ほんの少しでも正確性が欠けているのはNG」です。
もし、ピッキング後に処方箋で再チェックをする習慣をつけていると、
- 自分のピッキングミスのパターンに気付くことができる。
- ピッキングミスが減る。
- 「正確なピッキングができる人」だと周りから評価される。
- ピッキングが速くなる(1つ1つを正確にすることがピッキングの速さにつながるのです)
という、再チェックをしないときとは、真逆のプラスの結果になるのです。
『ピッキング後に処方箋で再チェック』、だまされたと思ってやってみてください。
ピッキングミスが一気に減ります。
そして、意外と時間はかかりません。
まとめ
ピッキングは、「処方箋に書かれたとおりに薬をタナから取ってくる」とはいえ、なれていない薬剤師にとってみれば、とんでもなく難しいことだったりします。
でも、処方箋の見方に慣れ、採用薬品を覚え、タナの場所も覚えていけば、だんだんと慣れていくものです。
最初はなかなか薬を覚えられないかもしれません。
でも、1つずつ覚えていくうちに、抵抗なく覚えれるようになっていきます。
”最初は、なかなかできないけど、やっているうちに、だんだんとできるようになってくる”
それが、はじめてのピッキング調剤なのです。